Rescue48
原状回復

壁紙の剥がれ・穴・汚れの退去費用。画鋲は貸主、釘穴は借主とされる線引き

運営:株式会社ドローン工務店

#壁紙#クロス#画鋲の穴#壁の汚れ#原状回復
退去時に最初に目が行くのは壁です。画鋲の穴、家具の裏の黒ずみ、角の壁紙のめくれ。管理会社の立会いでも壁は真っ先に見られます。国土交通省「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(再改訂版)は、壁について借主負担と貸主負担の例をかなり具体的に並べています。原因が分からないまま請求を受けると、払う必要のないものまで払いがちです。ガイドラインの例を、請求書に当てはめやすい順に整理します。

壁の穴は、どこから借主負担になるとされていますか?

分かれ目は穴の深さです。ガイドラインは「壁等の画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えは不要な程度のもの)」を貸主負担の例、「壁等のくぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの)」を借主負担の例として挙げています。

別表1の壁・天井の欄では、画鋲やピンの穴について「ポスターやカレンダー等の掲示は、通常の生活において行われる範疇のものであり、そのために使用した画鋲、ピン等の穴は、通常の損耗と考えられる」と説明されています。カレンダーを掛けるための穴は、住めば必ずできるもの、という整理です。

一方、くぎ穴やネジ穴については「重量物の掲示等のためのくぎ、ネジ穴は、画鋲等のものに比べて深く、範囲も広いため、通常の損耗を超える」という考え方が示されています。棚や大きな鏡を固定するために開けた穴は、この例に当たります。ポイントは「くぎかネジか」という道具の名前ではなく、「下地ボードの張替えが必要な程度か」という深さと範囲です。

エアコンについても書き分けがあります。借主が所有するエアコンを設置したことによる壁のビス穴や跡は、貸主負担の例に挙げられています。エアコンは生活必需品で、設置には穴が要るからです。ただし、借主所有のクーラーから水漏れして、放置したため壁が腐食した場合は借主負担の例になっています。穴は貸主、放置した水漏れは借主、と分かれます。

  • 貸主負担の例: 画鋲・ピンの穴(下地ボードの張替えが不要な程度)、借主所有のエアコン設置によるビス穴・跡
  • 借主負担の例: くぎ穴・ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度)
  • 借主負担の例: 借主所有のクーラーから水漏れし、放置したため壁が腐食した場合

壁の汚れや変色は、誰の負担とされていますか?

原因で分かれます。テレビや冷蔵庫の裏の黒ずみ(電気ヤケ)、ポスターや絵画の跡、日照によるクロスの変色は貸主負担の例です。結露を放置して広がったカビやシミ、手入れを怠った台所の油汚れ、タバコのヤニや臭いは借主負担の例です。

電気ヤケについては「テレビ、冷蔵庫は通常一般的な生活をしていくうえで必需品であり、その使用による電気ヤケは通常の使用ととらえるのが妥当」とされています。家電の裏が黒くなっていても、それは家電を置いたから生じたもので、置くこと自体は通常の使い方だという整理です。

結露のカビは扱いが分かれます。ガイドラインは「結露は建物の構造上の問題であることが多い」としながら、「賃借人が結露が発生しているにもかかわらず、賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合には、通常の使用による損耗を超えると判断されることが多い」と書いています。カビがあること自体ではなく、「知らせず、拭かず、放置した」が借主負担の条件です。窓際にカビが出たら、管理会社に一報を入れておくだけで位置づけが変わります。

タバコは「喫煙等によりクロス等がヤニで変色したり臭いが付着している場合は、通常の使用による汚損を超えるものと判断される場合が多い」とされ、賃貸物件で喫煙が禁じられている場合は用法違反にあたるものと考えられる、とも書かれています。

  • 貸主負担の例: 家電の裏の黒ずみ(電気ヤケ)、ポスターや絵画の跡、日照などの自然現象によるクロスの変色
  • 借主負担の例: 結露を放置して拡大したカビ・シミ、清掃を怠った台所の油汚れ、タバコのヤニ・臭い、落書き等の故意による毀損

壁紙が自然に剥がれてきた場合はどうなりますか?

ガイドラインの別表1に「壁紙の自然な剥がれ」という項目はありません。ただ、借主負担の考え方は「賃借人の使い方次第で発生したもの」に限られているとされているので、住み方と関係なく糊が浮いて剥がれたものは、その枠に入りません。原因を説明できる材料を残しておくことが要点です。

当サービスに2026年7月に届いた相談では、壁紙の状態が3種類に分かれていました。虫よけの剥がせるシートを貼っていて、剥がすときに塗装も一緒に剥がれた箇所。手を触れていないのに自然に剥がれてきた箇所。生活の中でついた傷。この相談は入居3年で、損傷は4か所以上、大きさは30cm以上、原因欄は「その他/よく分からない」でした。同じ壁でも1か所ごとに原因が違う、という実例です。

自然に剥がれた箇所は、施工時の糊の問題や下地の湿気であることが多く、住み方で防げるものではありません。ガイドラインが借主負担の例に挙げているのは、いずれも「賃借人の使い方次第で発生したもの」です。剥がれた時期と場所を写真に残し、管理会社に伝えておくと、退去時に「借主がめくった」と扱われにくくなります。

一方、自分で貼ったシートを剥がして塗装や壁紙が一緒に取れた箇所は、借主の行為が原因なので、通常の使い方の範囲と主張しにくい部分です。ガイドラインはポスターを貼ることによる変色を貸主負担の例にしていますが、これは「貼ること」が通常の生活の範疇にあるという理由で、剥がすときに壁を傷めた場合まで同じに扱えるかは書かれていません。ここは面積と補修方法を確認したうえで、負担範囲の話をするのが現実的です。

原因が自分でも分からない壁の傷みは、上の例のように1つの壁に複数の原因が混じっていることがあります。請求書を受け取る前に、箇所ごとに「これは何でこうなったか」を書き出しておくと、立会いで言い分が整理できます。

借主負担になった場合、壁の何㎡分を払うとされていますか?

別表2では、壁(クロス)の負担単位は「㎡単位が望ましいが、賃借人が毀損した箇所を含む一面分までは張替え費用を賃借人負担としてもやむをえない」とされています。部屋全体のクロス張替えを借主の義務とするのは妥当ではない、と本文にも書かれています。

ガイドラインの本文は、部屋全体の張替えについて「当該部屋全体のクロスの張替えを賃借人の義務とすると、原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではない」と述べています。一方で、毀損部分だけを張り替えると「その部分の張替えが明確に判別できるような状態」になるため、「毀損箇所を含む一面分の張替費用を、毀損等を発生させた賃借人の負担とすることが妥当」と整理されています。つまり上限は一面分で、天井や他の三面まで広げる根拠はありません。

Q&Aにも「部屋全部のクロス張替費用を負担しなければならないのでしょうか」という問いがあり、「各部位ごとの経過年数を考慮したうえ、最低限可能な施工単位(毀損させた箇所を含む一面分の張替えまではやむをえない場合がある)で修理するのが妥当」という答えが示されています。

そして、一面分になったとしても、クロスには経過年数の考え方が適用されます。別表2では壁(クロス)について「6年で残存価値1円となるような負担割合を算定する」とされているので、入居年数が長いほど借主の負担割合は下がります。6年住んでいれば、一面分の張替えであっても負担額は残存価値ベースで計算されることになります。

  • 負担単位: ㎡単位が望ましい。やむをえない場合も毀損箇所を含む一面分まで
  • 部屋全体の張替えを借主の義務とするのは妥当ではない、と本文に明記
  • 経過年数: 壁(クロス)は6年で残存価値1円となるような負担割合を算定

壁の請求書を受け取ったら確認する5点

  1. 1穴は「下地ボードの張替えが必要な程度」か(画鋲・ピンの穴なら貸主負担の例)
  2. 2汚れの原因は何か(電気ヤケ・ポスター跡・日照の変色は貸主負担の例、放置したカビ・油汚れ・ヤニは借主負担の例)
  3. 3自然に剥がれた箇所と、自分の行為で傷めた箇所を分けて書き出したか
  4. 4請求の範囲が「毀損箇所を含む一面分」に収まっているか(部屋全体になっていないか)
  5. 5入居年数に応じた経過年数の考慮(6年で残存価値1円)が反映されているか

よくある質問

画鋲の穴が20か所以上あります。数が多いと借主負担になりますか?

ガイドラインが貸主負担の例に挙げているのは「下地ボードの張替えは不要な程度」の画鋲・ピンの穴で、数の上限は書かれていません。ポスターやカレンダーの掲示は通常の生活の範疇とされているためです。ただし、数が多く下地ボードの張替えが必要と判断されるほどの状態なら、話は変わります。請求されたら、どの穴が下地ボードの張替えを要するのかを具体的に聞いてください。

窓のまわりの壁にカビがあります。全額請求されますか?

ガイドラインは、結露は建物の構造上の問題であることが多いとしたうえで、借主が「賃貸人に通知もせず、かつ、拭き取るなどの手入れを怠り、壁等を腐食させた場合」に通常の損耗を超えると判断されることが多い、としています。管理会社に知らせていたか、拭き取りをしていたかで位置づけが変わります。知らせた記録(メールやLINE)があれば残しておいてください。

1か所の傷で、部屋全体のクロス張替えを請求されました。

ガイドラインは、部屋全体のクロス張替えを借主の義務とするのは「原状回復以上の利益を賃貸人が得ることとなり、妥当ではない」と述べています。負担範囲は㎡単位が望ましく、やむをえない場合でも毀損箇所を含む一面分までとされています。さらに壁(クロス)は6年で残存価値1円となる考え方が適用されるので、入居年数に応じた減額も確認してください。請求書に面積と単価が書かれていなければ、明細を求めるところから始めます。

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